18日、前橋地方裁判所で2009年3月に発生した老人施設「たまゆら」の火災事故に関する判決が言い渡されました。判決は施設の元理事長(88歳)に禁固2年・執行猶予4年、施設管理者だった理事(76歳)には無罪というものでした。この火災では10名が死亡し、施設には低所得の高齢者が東京都からも斡旋されて受け入れられていたという実態が社会に衝撃を与えました。理事長は防火上の重要な注意義務や管理責任を怠っていたことは確かですが、行きどころのない高齢者を私財をなげうってまで受け入れていたことが情状酌量されたと思われます。
それにしてもこうした低所得者を受入れらる施設は全く不足しているのが現状です。軽費老人ホームの制度が導入されて数は増えつつありますが、東京都ですらまだ15施設(収容者数250人ほど)しかないことを考えると、今後急増する認知症高齢者の受け皿は全く不足しています。一方で人口減少を背景に日本の住宅には空き家が急増しています。これらをうまく活用して、何とか高齢者の安全な住み処を確保できないだろうかと思わずにはいられません。今回の判決でも傍聴席には遺族の関係者が全くいなかったと報道されています。身寄りのない方々の最後のあり方は、社会全体で考えてゆかねばなりません。筒井康隆の作品ではありませんが、「銀齢の果て」に待っているものが孤独死であるとは思いたくありませんね。
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