デュラン・れい子さんの著書「地震がくると言いながら高層ビルを建てる日本」(講談社α新書)は日本と欧米とのものの見方の違いがさまざまな日常場面を通じてわかりやすく描かれていて、とても面白い本です。著者は前著「一度も植民地になったことがない日本」によって広く知られた方ですが、私たちが安全、安心と考えている社会の仕組みも、欧米人から見るとなかなかわからないものだということをあらためて思い知らされます。
この本は比較文明論的な大げさなものではなく、日本のグローバル化の課題を指摘したりするような意図があるものでもなく、もっと普通に一人の女性が結婚を通じて海外との比較をせざるを得なくなった体験から紡ぎだされた自然な文章ですので、誰にでも気楽に楽しめる内容です。読んでみると安全とか安心というものは国によって、また民族によって、文化によって尺度や捉え方がかなり違うことが豊富な事例でよくわかります。地震のような自然災害に対しても、私達日本人は対峙しつつもどこかで受け入れながら長い歴史を歩んできた民族なので、欧米のような征服型の自然観ではなかなか理解されないかもしれません。
ところでやはり気になるのはリスクに対する自己責任の考え方の違いです。我が家の近くに下のような「貼紙」がありました。これは親切なのでしょうか、それともお節介なのでしょうか。
「空き巣に注意」ではない。「空き巣の下見に注意」です!
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防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1