テレビアニメでは必ずしも明確ではありませんが、磯野家はたぶん持家なのでしょう。築年数の古い木造家屋であれば、耐震診断、耐震改修も当然必要になるでしょうが、それと同時に忘れてならないのは、家具の固定の問題があります。兵庫県と防災科学技術研究所が行った実験映像も公開されており、固定していない家具の移動や転倒の怖さが見て取れます。(こちら)特に超高層建物での長周期地震動ではキャスター付きのものがすごいスピードで移動したり、重たくて動きそうもないと思われる書棚や洋服ダンスがあっという間に転倒するのを見るとかなり怖さがつのります。
最近は家具の固定に対する補助を行う自治体も増えてきています。例えば東京都港区では固定器具の種類によってポイントが決まっていて、一定のポイントまでは行政が費用を負担してくれるという制度を適用しています。その他には定額で世帯当たり1万円まで補助金が出るとか、取り組みは地域によってさまざまですが、特に高齢者や独り暮らしの方で家具固定が自分では難しいという方には業者による工事の支援が受けられますので、積極的に制度を利用したいところです。また、東京消防庁では「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」を平成24年7月に公開しています。イラストがついた解説が豊富な冊子で、家庭内にあるいろいろな家具がそれぞれどのように危険か、またどういった固定が効果的なのかが一目でわかるように解説されていますので、是非ご一読ください。
ところで磯野家は持家だから容易に釘が打てそうですが、借家の場合にはどうでしょうか。釘一本打つことも借家では難しいという方のために、家具を壁側にやや傾斜させ揺れても前に倒れにくくするスペーサーや突っ張り棒、粘着型の固定装置など、建屋を傷つけない工夫を凝らしたツールも開発が進んでいます。防災関連の展示会などで現物を見て効果が確認できるものもありますので、まだ固定していない方は是非ご検討いただきたいと思います。
さて、磯野家は漫画の世界なので家族は年を取りませんが、現実世界ではカツオくんやワカメちゃんが成人し、次いでタラちゃんも成人、社会人になっていくでしょう。今後、サザエさんに新しい子ども、すなわちタラちゃんの弟や妹が生まれる可能性もありますし、そうなるとフグ田家として磯野家から独立していくかもしれません。カツオくんやワカメちゃんもいずれは独立して一人暮らしを始めるでしょう。そうなるとこの家には波平さんとフネさんだけが残されることになります。波平さんやフネさんの老後や介護の問題も気になるところですね。磯野家の相続とか磯野家の介護という本も最近は出ていて、それぞれかなり評価が高いようですので、私も読んでみたいと思っています。こうした家族の「未来のリスク」に備えてどのように対策を講じていくかについては、まだまだ良いツールやガイドラインが少ないですね。