これまで災害の対応はもっぱら行政、そして市民の自主的な活動に主眼が置かれていました。大災害時には直後に行政が十分機能しないことは、阪神淡路大震災の時はもちろん、昨年の東日本大震災でもはっきりしていて、現場でまず災害対応しなければならなかったのは被災者自身でしたし、その感覚はここ数年相次いでいる自然災害や事故を通じてもはや一般市民に理解され意識が浸透していると思われます。もう一つ、地域には災害時の主体として欠かせない存在があります。それは企業です。
私たちのプロジェクトがスタートした5年前は、まだ地域防災の主役は市民であり、防災意識の高い地域は非常に熱心に活動が進められる一方、意識の低いところはまったく動かず、行政が自主防災組織率を高めようと働きかけても、どうにもならないところが殆どでした。ごく例外的に、被災経験のある地域の方々は平時の防災への取り組みに臨んでいただけますが、これとて実際の被災経験を上回る「想定」を行うとなると、なかなかイメージを抱けないというジレンマに悩まされていました。そのような中で、昨年の東日本大震災が発生し、は災害は繰り返し起きるし、過去に経験したこと以上の状態も考えておくことの大切さを思い知らされる結果となったと言えるでしょう。
これを受けて、企業も地域に何かできないかという気運が高まっており、災害後にボランティアとして被災地支援を行うことも大切だけど、平時から地域における防災に一定の役割を占めることができれば、市民にとっても、また行政にとっても大変心強い存在になるという方向に風が吹いています。今月13日に、宮城県と、大衡村、トヨタ自動車・トヨタ東日本が災害協定を締結したとのニュースが入ってきました。自治体間での災害時支援関係は沢山ありますが、企業と自治体とが平時から協定によって災害時支援を取り決めておくのは、まだ数が充分ではありません。
このような取り組みをさらに進めるには、企業側の体力が高まることも大切です。(ニュースリリースはこちら)
宮城県での事例は(1)災害発生後の人命救助、(2)一時避難場所の提供、(3)食料、飲料水、生活物資、復旧の用に供する車両の提供、(4)物資保管場所の提供、(5)災害関連情報の提供と、多岐にわたっています。これが良い先例となって、全国的な取り組みが広がることを期待します。
もう5年前になりますが、私たちのプロジェクトで最初に取り組んだ神奈川県藤沢市での災害シナリオでは、鵠沼地区にあるある企業の独身寮が津波で被災したことを契機に、地域住民の津波避難施設として3階建てに改築されるというストーリーを作りました。今思えば3階建ではとても不足かもしれませんが、それでも地域住民だけではなく、地元企業と手を携えて地域防災力を高めるというイメージを作る効果はあったように思います。防災ためにも日本経済の活性化と健全化は不可欠な状況です。