磯野家は波平さんもマスオさんもサラリーマンですので、当然昼間はサザエさんとタラちゃん、そしてサザエさんの母親フネさんがもっぱら家にいて、カツオくんとワカメちゃんは学校という構図になります。このように家族全員が揃っているのは、平日の夜と休日くらいのものだということを私達は意外と忘れがちです。ですので、災害が起きる時間帯によっては、家族全員で助け合ってという構図は意味をなさないことが結構あります。3月11日も、家族が全員バラバラで、別々の場所で被災したという方も少なくなかったはずです。大変悲しいことですが、家族に二度と会うこともなく、3月11日の朝が今生の別れとなった方もたくさんいたでしょう。
サザエさんの連載が始まった当時は、そもそも家庭に電話がほとんど普及していなかった時代です。いまは固定電話はすでに過去のものとなり、携帯電話全盛の時代です。固定電話自体がない家も珍しくありません。時代に合わせればカツオくんやワカメちゃんが家の黒電話で同級生に連絡をするなんていうのは、不自然な時代になっています。でもドラマでは友達の家に電話をしたら親が出てちょと緊張したなんていうエピソードが出てきますね。家族ぐるみで交友関係を了解していた時代のほうが、いざという時にはよかったのかもしれません。ノスタルジーでしょうか。
ところで日本では携帯電話を子どもに持たせるかどうかというと、ちょっとネガティブな論調が世間では多いようです。私はこれにはちょっと疑問を感じています。おそらく一番の問題点は子どもが大人の知らないいろいろなコミュニケーションを拡げることで、トラブルに巻き込まれる点にあるだろうと思います。つまり子ども同士で無邪気なやり取りをしているうちならまだしも、出会い系サイトなどに関わってとんでもない目にあう子どもが出てきている点を懸念しているわけですね。しかし例えば街中に野放図に設置されているさまざまな看板や広告の類は、全て大人を基準として作られていて、それを目にするであろう子供のことをちっとも考えていない大人が、携帯だけを問題にするのも変なものです。
私達はまず子供に関わってほしくない情報があるなら、その規制をきちんとするのが筋ではないかと思います。子どもが触れることで問題になるようなサイトを放置しておくことの責任はまず大人が負うべきなのであってそのための道具に過ぎない携帯電話そのものにいくら規制をしても、問題の解決にはならないと思うのです。311でも子供が携帯を捜査して情報を得て助かったというケースもあるようです。どのような技術も使い手の倫理に依存する部分はかなり大きいと思います。その点、今一度考えてみる必要があるでしょう。
学校での情報教育をきちんとすること、そのリテラシーを高めておくことこそが子どもにとっても社会に出て行く時のよい環境を備えることに繋がると思います。ですので、もし防災のための携帯電話の活用方法が学校の授業の中でも取り組めるのであればそれは携帯電話会社も含めて、みんなで協力して実施していくべきではないでしょうか。どのような情報が命を守るのに必要なのか、子どもにもきちんと伝えておける社会を目指すべきだと思います。