ちょっと前に「磯野家の謎」という本が出され話題になりました。磯野家はおそらく日本で一番有名な一家と言ってもよいサザエさんの舞台となっている「磯野」家のことです。この一家は当主である磯野波平氏を筆頭に、妻の磯野フネ、娘のフグ田サザエ、長男の磯野カツオ、次女のワカメ、そしてサザエさんの夫であるフグ田マスオと子供のタラオという、今時珍しい7人家族の大所帯となっています。最近では高齢社会を先取りして、磯野家の相続をテーマにした本まで出版されたようですが、確かに家族の近未来における支えあいを考えるうえでもいいモデルかもしれません。
ところで東京都の世田谷(原作者である長谷川町子さんの住んでいた世田谷区桜新町が舞台と言われています)に住んでいるとなれば、当然首都圏で直下型の地震が起きれば被害があっても不思議ではありません。磯野家の防災の水準はどうでしょうか。また何か課題はあるのでしょうか。桜新町にある長谷川町子美術館には、サザエさんの家の見取り図があるそうです。ネットでも図面が流通しているようですが(正式に公表されているのかどうか定かでないので、ここではリンクを張りませんが)、それによれば、磯野家は平屋で30坪以上の広さとなっています。面白いことに磯野家の内部が描かれるテレビドラマのシーンで、2階が登場したのを私は見たことがありません。この点、ドラえもんで登場する野比家は2階建てで、のび太君は2階に自室を持っています。これは時代の差ということでしょうか。
磯野家の2階がないということは、地震時には有利に働きそうですが、一方で家が旧いことで耐震性が劣り、地震で被害を受けることが心配ですね。磯野家がサザエさんの連載が始まった1946年や、マスオさんと結婚して磯野家に同居するようになった1950年代に建てられたとすると、何よりも建築基準法は今よりは古い基準でしたし、現在まで改築もされずにずっと住んでいたとすれば、すでに家は半世紀を超え、立派な老朽建物となっていることでしょう。平面図を見ると、開口部の大きい和室がほとんどで、耐震壁の割合はかなり低そうです。耐震診断をすれば、おそらく要改修になることは想像に難くありません。まずは耐震補強が必要になりそうです。
そうなると思い切って建て替えてしまえという話になるかもしれません。桜新町ですと、建蔽率が60%、容積率が200%くらいが一般的でしょうか。磯野家としても現在の7名がゆったりと暮らせて、臨戸との間隔を適切に確保したいとなれば、2階建てにしていくのはごく自然な流れのように感じます。そのような話し合いが(アニメには登場しませんが)磯野家の茶の間では何度かなされていると想像するとなかなか面白いものです。カツオくんとワカメちゃんは別々の部屋にしてくれというでしょうか。
実際、桜新町の住宅の建てこみ方ですが、戸建住宅には大きな敷地にゆとりを持って建てられているのもあれば、相続の関係からか敷地を細分化して処理したために法規ぎりぎりで建てていると思われる家も見られます。さて、磯野家はどういう対策を選択するでしょうか。皆さんだったらどうされますか?