東日本大震災で亡くなられた方々の数は18131名(総務省消防庁第146報)、行方不明者は2828名となっています。亡くなられた方々のほとんどが津波による溺死だったと言われています。市町村別に死者数を見ると、宮城県石巻市の3471名がトップで、次いで陸前高田市の1555名、気仙沼市の1204名となっています。石巻市の人口は16万人余りでしたので、死亡率は2%近くになり、非常に大きな値です。では、いわゆる災害弱者と呼ばれる人たちの死亡率はどうだったのでしょうか。
亡くなった方の内訳をみると高齢者が多いことは一目瞭然で、それは以前にもこのブログで紹介しましたが、では障害のある方の人的被害はどうだったのでしょうか。障がい者の死亡率についてはNHKの福祉ネットワーク取材班が独自に調査したものが発表されています。ネットでも流通している情報ですのでご覧になった方も多いのではないかと思いますが、集計できた岩手、宮城、福島3県の被災の大きかった地域で、全住民の死亡率がおよそ1%だったのに対して、障害者の死亡率は約2%と、2倍の差があるという結果が出ています。実はこの種の統計は母集団の把握が意外と大変で、NHKがまとめた資料でも陸前高田市、仙台市、気仙沼市では障害者のデータがありません。集計の担当者はさぞやご苦労されただろうと思わせる資料ですが、それでも障がい者の災害時の安全の問題を考えるうえで、貴重な情報をもたらしてくれます。まだご覧になっていない方は是非データの出ている記事をご覧ください。(こちら)
全体で2倍の差と言っても個別にみていくとずいぶん違いがあり、たとえばもっとも死者を生じた石巻市では市全体での死亡率が1.96%であるのに対して、障害者全体で7.47%と、4倍近くの開きがあります。障がいの内訳をみると身体障害が8.45%、視覚障害が7.64%、聴覚障害が6.93%、肢体不自由が8.30%、知的障害が3.09%、精神障害が3.99%となっており、いずれも市全体の平均と比べると大きく開いています。障がい者が暮らしている場が市全体に均一に広がっているのかどうか(例えば津波の被害の大きかった所にまとまって生活する施設があり、そこが被災したとか)、詳しいデータがないのでわかりませんが、同じ程度の身体的被災であっても命に係わる危険性の高い方々への配慮が一層必要だったことは間違いないと思います。
例えば障害のある方々が暮らす建物や使う施設こそ、耐震性を高め、防災の拠点となるようなさまざまな工夫をしておくことが望まれます。これは市場原理や妙な平等主義では動かせない部分ではないかと思います。地域の防災を考えていく中で、このように弱いところから積極的に強いところに変えていく、いま地域づくりの発想を変えることこそ、新しい政策として求められていると思います。