足立区は東京都の東北部に位置しており、日光街道の宿場としての千住をコアにして、古くからの街なみが広がっている地域です。先月28日、足立区長の定例記者会見で、区が「孤立ゼロプロジェクト」をスタートさせるという発表がありました。これは区が提案している「足立区孤立ゼロプロジェクト推進に関する条例」を来年1月より施行させるためのものです。同区ではこの条例についてこれまで、パブリックコメントを募集するなど準備を進めてきました。(記者会見資料はこちら)
17年前の阪神淡路大震災の後では孤独死という言葉が使われましたが、孤独よりも孤立ではないかという意見が多くなり、今では災害は一つの引き金にしかすぎず、地域における人間関係が乏しく、トラブルがあった時でも相談相手がいない中で誰にも看取られることなく死亡するケースについて「孤立死」という言葉が定着しました。しかし、いわゆる社会的孤立というのはその時点での社会状況に大きく依存しますので、今回足立区が条例化したものでも、孤立を「親族や近隣との交流を形成できない状態、又は生活に必要な支援が受けられない状態にあることをいう。」と幅広く定義しています。添付された資料によれば、具体的には「日常生活において世帯以外の人と10分程度の会話をする頻度が1週間に1回未満、または日常の困りごとの相談相手がいない状態」として、対象を絞り込むようです。なかなか難しいですね。
いわゆる高齢者の孤立については、単身高齢者がこれから急増する可能性が高いので、まずは取り組むべき課題ではありますが、この他にもいわゆる引きこもりや、認知症もその原因となる自己放任(セルフネグレクト)など、孤立に至るプロセスは多様にあるので、どこまで範囲を拡げるかは常に運用状態と実効性を確認、検証していく必要があるでしょう。もう一つこの「条例」によって、個人情報が支援する側の関係者に本人の了解なく提供されることになります。個人情報保護の観点から制約を設けるべきだという意見もあるでしょうが、私はこの情報提供は行政がきちんと監視していくことで十分諒解できる範囲に納められると思っています。
いずれにせよ足立区は先進的取り組みを進めるために一歩を踏み出したわけです。この取り組みについて他の地域の方にも関心を持っていただき、地域に即したさまざまな孤立支援の輪を拡げていただきたいと思います。