静岡大学の牛山素行先生は実践を大切にする防災研究者で、常に現場で役に立つ情報発信に努められています。そのホームページは防災の関する知識の宝庫になっており、一般市民の方がもたれるであろうさまざまな疑問に答えられる内容が盛りだくさんです。さて、この牛山先生が最近新しい著書「防災に役立つ地域の調べ方講座」(古今書院)を出しました。内容は地域の社会的な成り立ちから自然条件、災害歴まで、専門家でなくてもできる実践的な調べ方がわかりやすく解説されています。学校などの防災学習用教材として是非活用していただきたいものです。
実は私も防災をテーマに学校でお話をさせていただくと、学校の所在する地域に関する知識、たとえば歴史や現状に関する統計的な情報などを先生方が意外と持ち合わせていないケースにしばしば遭遇します。もちろん地域に関する造詣がきわめて深い先生方もいらっしゃいますが、人事異動で数年で勤務先が変わってしまうと、なかなか落ち着いて地域の調査もできないようです。できればここで紹介した牛山先生の本や、市町村や県が公開している防災資料などに基づき、防災に役立つ地域のカルテを学校単位で作成していただいたらどうでしょうか。
藤沢市の鵠沼地区では公民館に郷土史に関して非常に詳しい方がいらっしゃいました。その方は、大正の関東震災の時に、鵠沼でどのように被害が出たのか、また今では埋め立てられてしまったけれど鵠沼にあった湖沼や池などの情報も持っていらっしゃいました。次の災害時に古地形や土地利用の変化に関する情報があれば、防災対策上非常に有益なはずです。
地域の事は地域でいつでも調べることができる、そのような道具立てを私たちのプロジェクトでももっと積極的に整備していきたいと思います。