現在私たちのプロジェクトチームは、つくば市内にある53の小中学校の防災訓練のサポートをやらせていただいています。よくよく考えてみると、つくば市内には防災に関わりの深い研究機関がきわめてたくさん存在しており、これらを積極的に活用しないでおくほうがおかしい気がするほどです。活断層は産業技術総合研究所の地質調査所がありますし、建物構造は建築研究所、土木研究所があります。筑波大学にも防災に関わりの深い第一線の研究者はいっぱいいますし、企業の研究所も通信系から構造物系までたくさんあります。昨年の震災を契機に、市もこれらの研究機関とさまざまな形での協力関係をスタートしたと聞いています。
さて、学校は防災の核であるにもかかわらず、学校を預かっている先生方は実はいろいろな点で不安に思っていることが多いようです。これを明らかにするために、先般全公立の小中学校にアンケートを実施しました。まだ全校の回答が揃っていませんが、現時点でわかっていることは殆どの学校が不安に思っていることの中に災害時の保護者との連絡体制という点があります。緊急時に保護者と連絡が取れない背景としては、学校に保護者の連絡先が登録されていなかったり、登録されていたとしても通信途絶などでどうしようもないことを不安に思っているようです。個人情報の観点から自宅以外の連絡先を学校に知らせないという保護者もいるようです。この問題も地域によって解決方法はだいぶ違ってくるので、画一的な対処方法だけでは解決できない恐れがあります。
例えば地方都市で、学校に通っている児童の保護者のほとんどがその地域で生活しており職場も近いところにあるのであれば、通信機能が損なわれたとしても連絡は意外と容易かもしれません。一方でつくば市のように東京の通勤圏の一部にあるところでは、保護者との物理的な距離が離れているので、かりに連絡が取れたとしても、すぐには迎えに来られないかもしれません。現に311の時も東京から帰宅する保護者が一番時間がかかりました。また保護者の方の被災状況と児童のほうの被災状況が大きく異なっていることも考えられます。学校が無事でも、保護者が被災していたらということはあまり学校では考えないようです。そう考えると、学校の地域特性や児童と保護者の地理的特性も勘案した連絡体制や引き渡し態勢を整えておくことが望まれるでしょう。
IT技術が進歩したとはいえ、学校防災での活用はまだ沢山の工夫が必要です。学校のホームページに掲示板を作り、離れたところにいる保護者からも携帯端末で確認出来るようにするとか、保護者や地域の様々な関係者から携帯メールで被災状況を提供してもらい、それに基づいて学校自体を防災の情報基地にするとか、工夫すればいろいろなことが出来そうです。学校が単に行政の下請けのような立場に甘んじてしまうと、結局は災害の対応が後手に回ってしまうことにつながってしまう気がします。