科学の限界というと、私の世代では英国の生化学者でノーベル賞学者のP.B.メダウォー卿が出された科学エッセイ「The Limits of Science」を思い浮かべますが、今回の震災を受けて日本でも池内了先生がちくま新書から同名の「科学の限界」を出されました。この本では科学が高度かつ無秩序に発展してしまったことによる弊害を科学の限界として捉えることを主張しており、そこでの視点は人間が生み出すものとしての限界、社会が生み出すものとしての限界、科学に内在する限界、社会とのせめぎあいにおける限界の4つに分けて、大変わかりやすく書かれています。
かつてメダウォー卿は「カタストロフィーを除けば、科学の答えることのできる問題に科学が答える力に限界がないことは、科学の最大の光栄であると私は思っている」と述べています。3月11日の災害とそれに伴う原発の事故が科学の限界を示すものであったのか、いま私たち一人一人があらためて考えてみる必要があると思います。