私たちの研究所のある茨城県つくば市ができたのは昭和63年のことで、筑波郡谷田部町、大穂町、豊里町、新治郡桜村が合併して市制がスタートしました。その後、つくば山頂を含む筑波郡筑波町や稲敷郡茎崎町も編入されたため、総面積は284平方キロと県南ではかなり規模の大きな市となっています。市内には現在53の小中学校があり、約1万3千人の小学生と、約5600人の中学生が勉学しています。
つくば市が上記のような寄り合い所帯で成立したこともあり、53の学校は実に多様な形態を示しているのもつくば市の特徴です。例えば小学校ですが、最も規模の大きい谷田部小学校の児童数は900名になんなんとしていますが、最も少ない児童数の山口小学校ではわずか8名です。まるで山の分校のような山口小学校では、今年の4月にたった一人の入学式が行われました。
いまつくば市の小中学校は一貫教育に向けて大きな再編の時期に来ています。小学校と中学校とが連続して教育されることは、いわゆる中一ギャップをなくす効果もありますが、学級担任制から教科担任制へのスムーズな移行や、子どもたちの成長過程に応じた進級選択など、新しい教育への取り組みが試みられる最初のステップとなるでしょう。もしかすると15歳で大学入学なんていうケースも出てくるかもしれません。
さて、このような公立学校ですが、防災の世界でもいま学校が変わりつつあります。一つは防災教育の充実という問題です。よく知られているように東日本大震災では子供たちが被災したケースにはいろいろなものがありました。無事に津波から逃げて助かった子供たちもいれば、全校避難の途中で津波に遭遇し命を落とした児童もいます。大切なことは一人一人の生存力、災害時に生き残る力を充実させていくことです。そのために教育プログラムの中でいかに防災を取り入れていくかが大きなテーマとなっています。防災は総合的な学習テーマですので、単に理科で地震の仕組みや津波のメカニズムを知るだけでは対処できません。避難中には健康の問題も出てくるでしょうし、そもそも地域の事を理解しておかなければ災害対応ができないとなれば、地理や社会の知識も必要です。緊急時の情報伝達については通信やインフラに関する知識も求められます。このため多くの学校では総合学習の中で防災をテーマに取り上げるところが増えているようです。
もう一つは今回多くの被災地で学校が避難所になったことから、地域防災の核として学校と地域とが上手に連携して、なるべく自律的に、地域に生じるさまざまな問題を解決しながら災害を切り抜けていく力を涵養するという方向があります。つくば市もこの観点から市立小中学校全53校について、地域と連携した防災訓練を今年度内に各校で実施することを決めました。それを受けて先日私たちも先生方に防災の講演をさせていただいたところです。
今年度も残り5か月を切りました。いま各校から地域防災見直しのための活動の相談が寄せられています。これから行われるさまざまな取り組みについては、つくば学校防災のページにその都度紹介すると同時に、このブログでも報告していきたいと考えています。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1