東京電力福島原子力発電所の廃炉作業員が賃金が減らされたり、作業に関わる情報を外部に漏らすとクビになったりするというような報道がされています。親会社ではなく下請けの、さらに下請けの作業員がいる現実では、上に盾突くことが許されない歪んだ現場の状況が垣間見えます。社会の仕組みが複雑になるにつれ、このように現場でやられていることが、本来の責任者にはよくわからなくなるという仕組みはたくさん出てくるようになりました。たぶん日本を代表する自動車メーカーの社長さんも、実際に車を組み立てて見ろと言われてもできないでしょうし、ひょっとすると車の走るメカニズムもきちんと理解できていないかもしれません(違っていたらゴメンナサイ!)。ですので東京電力の社長が現場に行っても、何一つ出来ないのが現実でしょうが、下請けには厳しく当たるというのは何ともやるせない感じです。
先に発表され、何度も誤りが報道されている原子力規制委員会による各原発からの放射性物質拡散予測も、結局は委員会委員誰一人その作成や計算に携わっていないようです。それぞれの原発を持つ電力会社、さらにはそこに入り込んで仕事をもらっているコンサルタント会社のエンジニアが計算をしているだけで、もしかすると使っているコンピュータソフトも外製のもので、中身をチェックして(理解して)使っていないかもしれません。そうなると規制委員会の委員に判断を委ねられても・・・と思ってしまいます。
こうして訳が分からないうちに安全に関する仕組みができあがり、一定の制度が動き出してしまうと、もう改善がやりにくくなります。それには前例主義があり、「従前の例になく」と言われると、議論すら行われないということがままあります。福島の原発について言えば、私たち国民全員が当事者なのですから、いま現場で何が行われているのか、またどのような困難が伴っているのか、全てあからさまに公表してほしいものです。放射線や原子力の事は難しくてわからないから聴いてもしょうがないと思ったとたんに、私たち自身が未来に対する責任を放棄してしまうのですから。
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