以前にこのブログでも書きましたが、私は「防災」を安易に「減災」と呼びかえることには批判的です。ややもすると防災の研究者が単に自らの責を軽くするために防災という言葉を使わないだけという印象が強いからです。減災と明確に言うならば、やはり減ずる目標を設定する必要があるでしょう。
このような中、島根県が現在同県に発生が想定されている宍道断層の地震について今後10年間で死者を5割減、経済被害を4割減にするという目標を打ち出したというニュースが流れました。公表された資料を見ていないのでよくわかりませんが、もし数値目標が設定されているのであれば、大きな前進だといえるでしょう。これから各自治体、さらには国にも同様の取り組みを進めていただきたいと思いますが、仮に10年後に地震が発生しなかったとしても、その効果がどこまであると推定されるかという検証をきちんと行い、そのうえで、さらにその先の10年の新しい目標を設定してもらいたいと思います。検証をきちんとせずに、だらだらと進められる政策では、貴重な税金が意味なく浪費されていると思われても仕方がない気がしてしまいます。
さて、山陰地方はこれから「雪」という季節のもたらす大きな負荷を抱えることになります。1927年3月2日に発生した北丹後地震は、死者2900名余り、現在の京丹後市に甚大な被害をもたらしました。雪の中の災害のうえ各地で火災も発生し、被災者は寒さの中次々と犠牲になっていきました。今でも京丹後市には当時の貴重な写真記録がたくさん残されていて、2年ほど前に地域の方に見せていただいたことがありました。災害はいつ起きるかわかりません。発生時期や時間によってはさまざまな複合災害に発展する可能性を忘れないでいたいものです。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1