インフルエンザとともに、これからの季節で懸念される危険は火災です。日本は古来よりその建物構造や都市の性格上、延焼火災のとても多い国でしたが、消防力の強化や安全な火気器具の普及などで、出火件数はかなり押さえられてきています。それでも平成22年中に火災で亡くなった方の数は1,738名、負傷者は7,405名(平成23年版総務省消防白書による)に上っています。季節で見ると11月から3月にかけての冬の時期の死傷者数が多く、やはり暖房などの熱器具の利用時期でもあり、乾燥や強い風などが火災の被害に影響していると思われます。
近年特徴的なのが、高齢死傷者の増加です。逃げ遅れと一口に言ってもいろいろあって、身体が不自由で逃げ遅れるだけでなく、認知症などで判断力にかけていたために逃げられなかったというような高齢者もかなりの数にのぼります。高齢者をいかに火災から守るか、いま一番大切な取り組みになっています。2006年6月に消防法が改正され、新築住宅における住宅用火災警報器(住警器)の設置が義務づけられましたし、既存住宅についても最長で2011年6月1日までに市町村条例で設置が義務付けられました。しかし耳の遠い高齢者にはベルやサインが届かない可能性もあります。寝たきり高齢者や障害のある方は、たとえわかっていても迅速に動けないかもしれません。そのようなときこそ、外からの迅速な支援が必要です。ハード対策による技術的進展を補うように、ソフト対策で足りない部分を埋めていく努力が必要です。
冬場はまたストーブなどの暖房器具で一酸化炭素中毒を起こしやすい時期でもあります。節電で電気を使わない代わりに、ストーブでと思って暖をとったとたんに中毒になってしまっては、何にもなりません。一酸化炭素は無味無臭のため、なかなか気づきません。旧型の器具には不完全な燃焼を誘発するものもあるようですので、消費者庁のページでチェックして、換気に配慮し点けすぎにはくれぐれも注意して、安全で快適な冬を迎えてください。
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国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1