エレベータ事故がまた話題になっていますが、今回事故を起こした機種と前回(2006年)事故を起こした機種とは同型だったことが報道されています。前回の事故を受けて2009年に改正された建築基準法により、扉が開いたままでエレベータが動かないようにする装置がつけられたにもかかわらず、既存の設備については遡及して設置する義務がないために、今回の事故を防ぐことができませんでした。安全のためのルールが変わった時に、従前のものにはリスクが伴うことは知らされていないのが現実です。これは建物の耐震性についてもいえることで、現在の建築基準法に照らして適切ではない建物(既存不適格建物)は全国にたくさんあります。これらを全て一時に改修することは不可能ですので、自然に更新されていくのを待つしかないのが現状です。景気が良い時はどんどん建物が更新されますが、不景気になるとなかなか進まず、結局は景気対策が一番の防災対策になってしまうのかもしれません。
これは一つの提案ですが、既存不適格なものはそれが建物であろうと、エレベータのような設備であろうと、全て現状では「不適格である」ことを表示させることを義務づけたらどうでしょうか。利用するか利用しないか、それは利用者に判断を任されるべきことです。法律でそうなっていないからという言い訳が通用するわけですから、なおさら「そうなっていないこと」を開示したうえで利用してもらうべきではないでしょうか。
「震度6以上の地震動では被害が出る恐れがあります」と明記された商業施設で、あまり人が来なかったら、やはり建て替えざるを得ないでしょうし、エレベータの場合には、それなら階段で行こうと、却って利用者の健康には益になるのかもしれませんよ。
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防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1