一般市民にとって地震時に最も恐ろしいと思われているのは、何と言っても火災でしょう。地震火災のすさまじさは、過去の歴史災害でも証明されていますし、何と言っても大正12年(1923年)の関東大震災では、死者のかなりに部分が火災に起因するものだったと言われています。そのため、首都圏で懸念されている直下型地震や、東海、東南海、南海トラフで近い将来起きると考えられている海溝型の大地震でも、人口密集地で発生する火災は、津波と同様に大変危険視されています。では「どこが危ないのか」って言われても、実は専門家ですらなかなか明確には答えられません。防災レベルを高めるためには、地域の火災危険の程度を相対的にでも観ることのできる何らかの指標が必要です。
このような中、国土交通省は「地震時等に著しく危険な密集市街地について」と題して、現時点における全国の市街地で地震時に延焼火災が拡大したり、避難が困難になると思われる地区の概要と面積のリストを公開しました。個々の番地が明記されているわけではありませんが、全国197地区5745ヘクタールのリストが載っています。中でも東京は113地区1683ヘクタールに及び、抜きんでて危険個所が多くなっています。東京都と大阪府については、地図も添付されていますので、どこが危険と考えられているかが地理的にも理解できます。
改めて東京都の危険個所を見てみると(別紙3)都心のオフィス街の核をなす地区は全くマークされていないのに対して、これを取り巻くように拡がる区部には各地に危険な場所があることが見て取れます。危険とされたこれらの地区は、単に住宅密集地であるだけでなく、道路幅が狭く行き止まりなどがあり、避難の危険性が高いということが評価されているようです。特に高齢化が進むと、避難することの困難性は日々高まります。
今回の公表には新しいポイントもあります。それは単に現状を示すだけでなく、これからの達成目標を併せて示すことで、私たちにその達成状況を考えさせていることです。街を改善していくのは一朝一夕には行かないことですが、私達も「街が綺麗になった」ということだけに注目するのではなく、それがどのように「安全になった」かということにも、高い関心を持っていく必要があります。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1