以前、制度があるにもかかわらず現実には活用されていることが少ない災害復興のまざまな制度について書きました(2011年9月)。震災から1年半以上が経過した今、被災者が抱えた住宅ローンの返済を減免する制度についても、たった80件余りしか利用者がいないという事実が報道されています。被災者の二重ローン(もともと抱えていたローンに加えて、復興のために家を再建することで新たなローン負担が生じること)を解消するためにも、この制度の利用が期待されたのに、なぜ使われないのでしょうか。報道では昨年8月からスタートした制度で、申し込みがあった357件中、債務整理ができたのは83件だそうです。
原因の一つは金融機関が債権者に返済の繰り延べを進めたリスケジュール(スケジュールの組み直し)にあるということです。これでは災害が起きても金融機関は痛くもかゆくもない(ちょっと表現が悪いですが、被災者に届く義援金も、生活再建支援金も結果的には金融機関に吸い取られてしまう)という状況になります。これではやっぱりリスクの負担だけが被災者にのしかかるという、なんともやりきれない状況になります。
契約者も災害で落ち込んでいるときに、やたらと複雑な仕組みを納得して選択するというのは容易ではありません。被災者にわかりやすく、本当に寄り添った形で、被災の程度に応じて、本当に困っている人に必要な支援があまねく届くための仕組みを、私達はもっと考える必要があると思います。
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防災情報研究部門
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