衛星FM放送局ミュージックバードからオンエアしている「防災インフォメーション」で紹介する関係もあり、これから数回に分けて、防災に役立ちそうな最近のネットの情報を取り上げて紹介し、このような情報の今後の見通しについて考えてみたいと思います。今日はまず気象関係の防災情報です。
国土交通省は旧運輸省と建設省、国土庁、北海道開発庁が合体してできた巨大官庁です。天気予報でおなじみの気象庁もその傘下にあるわけですが、気象災害に関わるさまざまなリアルタイム情報や、河川ごとの水位や流量、さらには地震、火山、津波災害に関する情報もまとめられていて、とても便利です。特にリアルタイム雨量やリアルタイムレーダーは、今の降水の状態や、これまでの雨雲の動きがコマ送りで見られますので、今後数時間から数日程度の気象変化を推測するのには役立ちます。もちろん気象庁のサイトにも、気象に関しては同じ情報が掲載されています。気象庁のサイトで便利なのは、過去の気象統計に関するデータが簡単に閲覧できることです。これを使えば平年値(過去30年間の気象観測値の平均)やその変動傾向などを理解するための基礎データが容易に得られます。学校での防災教育にも活用していただきたいですね。
このような官製の情報に対して、民間サイドでも気象防災に役立つ情報が発信されています。平成5年の気象業務法の改正を受けて、さまざまな民間事業者が気象予報に関わってきています。よく知られているものを2つ紹介しましょう。
インターネット時代における民間企業の強みとして、会員からのリアルタイム投稿情報をうまく活用して、気象庁の計器観測だけでは捉えきれないような細かい空間情報をまとめて発信しているという特徴があります。また提供される情報も、季節やその時に社会情勢に即して市場ニーズのありそうなものを特集しているのも民間の強みです。
電力会社は特に送電線障害による停電に高い関心を持っています。そのため雨や雷の発生については独自に地理情報を公開しており、首都圏ではこれがなかなか見やすく、わかりやすいので重宝します。原発事故で旗色の悪い東京電力ですが、この情報は今後も継続して行ってもらいたいものです。
最後に各地域の自治体(市町村や都道府県)からの防災情報があります。現在では多くの市町村が独自のホームページをもち、固有の地域情報を発信していますが、たいていの市町村ではトップページに防災に関する情報や災害警報、注意報などに関する情報をまとめて載せていたり、リンクを張っていたりしています。これらは防災無線を通じて出される避難情報ともリンクしていますので、台風や前線性の豪雨など、災害の発生がある程度予見される場合には、関心を持ってみておく必要があるでしょう。個人的な印象では、市町村によってページの出来にはかなりの差がある気がします。皆さん自身の地域を一度チェックして、欠けているところがあったら是非地元自治体に要求してみてください。改善を進めるのは市民の声が一番です。
2010年に奄美大島が豪雨災害に襲われた際に、奄美市立住用小学校の校長先生は、学校でインターネットを使って雨雲の動きを観察していたそうです。災害当日の昼過ぎに、学校周辺は猛烈な雨になったのですが、校長先生の冷静な判断と、その指示を受けて動いた教職員の方々のチームワークで、学校に来ていた児童全員は無事に災害を乗り切ることができました。情報をうまく活用することで、生死を分けることもあります。
社会に溢れるリスクと、そのリスクに関する情報について、私たちはどのような態度で臨んだらよいのでしょうか。「防災情報戦国時代」の項でも書きましたが、IT技術の進展のおかげで、実に多様な情報が多様なルートで得られるようになりました。大切なことはこれらの情報の中で、自分にとって必要なものを見極め、活用していく能力ですが、学校教育に「情報」が取り入れられたのはごく最近で、多くの市民は情報の利用の仕方は自己流で、その能力のばらつきは大変大きいようです。加えて、人と人とのつながりが希薄化しつつあるという報告もありますので、なおさら情報的に阻害されてしまう人が出てくるのではないかといささか心配です。