災害時に地域に解説される避難所がいま変わろうとしています。これまで避難所と言えば、小学校や中学校の体育館というのが一般的なイメージでした。ところが少子化が加速し、地域の子供の数が減る中で、学校が統廃合され、避難所として使えなくなってきているところがあります。さらに最近では小中一貫教育が導入され、学校施設を集約して効率的でスムーズな義務教育を目指す動きも盛んです。当然ですが、学校施設が集約されれば、子どもたちの学区は広くなり、基本的には中学校区程度の広がりの中で小学生も通学することになるでしょう。
つくば市にもこの流れがあり、「学園」と呼ばれる15の校区に集約されつつあります。中心部にある吾妻、竹園、春日、手代木、桜・並木あたりは校区も広くないので、あまり影響はなさそうですが、郊外の地区はいずれは小学校が統合され、距離のある小学生は通学バスで通う形になるのではないかと思われます。防災の観点からは、校舎の耐震性という点でいえば、依然として旧耐震の建物が少なくないつくば市の公立学校ですが、中学校の校舎と小学校の校舎の良い方(耐震性の高い方)を活かせば、コンパクトでより安全な学園生活も可能になるというメリットもあります。
しかし、避難所として見た場合には、これまで近くにあった学校がなくなることによって、住民が収容型の避難所に行こうという気持ちはますます低下する気がします。さらに高齢化が進行し、わざわざ遠くの避難所に行くのは嫌だという人も多いでしょう。高齢者にとっては、身近で簡単に(短時間で)移動できる範囲に避難施設があることが望ましいことは明らかです。実際、地域での防災の取り組みでお話をさせていただく時の印象では、災害時には自分の地域(家の近所で)で避難生活を送りたいという方がほとんどです。
学校の校舎は使わなければ傷む一方ですが、何とか上手く活用して地域の安全や安心に役立てられるようにならないでしょうか。また公的な避難所ではなくても、さまざまな地域資源を活用して、より快適で安全な避難が遅れる方法も探っていく必要がありそうです。効率化だけを追求した杓子定規な防災対策では、これから来る大災害には立ち向かえない気がするのです。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1