坪川です。震災から7か月。被災地はまだ復興とは程遠い状況です。でもいくつかの地域では、小さいけれども希望の灯りがともりはじめています。災害や事故のような「不慮」の出来事に対して、私たちの社会はいろいろな緩衝の仕組みを作ってきました。保険や共済のような私的な経済補償制度もそうですし、弔慰金や見舞金、義援金のような公的な制度もあります。また税の減免や、利子の補給、さまざまな料金の支払い猶予、奨学金などの軽減など、被災者の方々に対する支援の制度はたくさんあります。これらはいずれも所管する官庁が違ったり、制度の趣旨が違ったりしているため、非常に複雑です。
災害によってさまざまなものを失った被災者にとって、これらの仕組みはあまりにもややこしく、ストレスばかりがかかるように思われてなりません。ましてやこれからの高齢社会に、今の制度は決してやさしい制度ではないように思えます。あっても使われない制度がいっぱいありそうです。雑損控除の特例による還付申告が2%に満たないとか、奨学金の返還減免措置があってもホームページでアナウンスしていないなどが報道されるにつけ、そろそろ交通整理が必要なのではないかと思います。
どのような制度も2つの視点が必要だと思います。一つは制度全体を見る目で、制度の運営は公正で、適切に行われているのかという視点です。もう一つは制度が適用される対象者を個別にみる視点で、その方法で問題がないか、不当に差別的だったり、偏ったりしていないかという視点です。前者がマクロな視点、後者がミクロな視点でしょうか。災害時に適用される現在の制度は、どうもそのあたりがきちんとしていないように思えます。
優しい社会をつくるという視点を加えないと、日本も住みにくい社会になるばかりという気がしますね。
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防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1