坪川です。先週末、中央大学の春日キャンパスで開催された計画行政学会において、火山災害についてのワークショップが行われ、コーディネーターを務めました。火山災害は日本では非常に身近な災害であるにもかかわらず、私たちはあまり関心を持っていません。それは災害の発生場所が局地的で、人口の密集している大都市では近年大きな影響を受けたことがないことにも起因していると思われます。
しかし歴史的にみると、江戸では富士山や浅間山の噴火に伴う降灰が市民生活に大きな影響を与えていたのも事実で、狭い日本列島に住む限り、影響は免れられない災害でもあります。
今回のワークショップには火山噴火の起きている現場の首長という立場から、宮崎県小林市の肥後市長、東京都三宅島の平野村長をゲストとしてお招きし、さらに都城市危機管理課の栄留対策官にもお越しいただき、現場の声を率直に語っていただきました。
東日本大震災の陰に隠れていますが、現在霧島の新燃岳や鹿児島県の桜島は噴火警戒レベルが3になっていて、入山規制がされています。
ある意味で大規模な噴火がいつ起きて大丈夫なように、対策を整えておく必要があります。
地震災害と比べると火山災害は、①溶岩流や火砕流などの噴出物が到達する範囲は圧倒的な破壊力がある現象のため、防御できる内容が限られていること(したがって最善の対策は逃げるしかないこと)、②災害が人間生活の時間尺度と比べると圧倒的に長い時の流れで起きうるため、現世代だけでは防災が完結できないこともあること、が特徴といえると思います。
この後者の点では津波も同じです。つまり現世代だけでは将来にわたって永続的に安全で安心な社会をつくることには限界があるということになるでしょう。
私たちは火山や津波の災害を通じて、多世代による防災をそろそろデザインしていかなければならないのかもしれません。
現在赤字国債の発行や、消費税率の引き上げなどが議論されていますが、現世代だけでできることと、現世代だけでは無理なので、やむなく次世代以降に託すことをある程度明確にして、今後数十年にわたって続く息の長い復興計画が求められています。
その際、場合によっては途中であらためること、見直すことも必要でしょうから、10年から20年程度ごとに、現状を確認し、修正が必要なら柔軟に対応する仕組みも必要かもしれません。