坪川です。今日は15時より陸前高田市役所の仮庁舎内で、市の復興担当者と我々の研究所の防災政策に関する研究会との意見交換会が行われました。ご存知の通り、陸前高田市は岩手県最南部で最も甚大な被害(死者1200人余り、不明者約580名)を受けました。
三陸沿岸被災地を回られた方なら誰もが気づくことですが、ここではリアスの海岸線沿いの主要道には津波浸水想定区域を示す標識が出ています。もちろん浸水想定区域では今回非常に大きな被害が出ています。一方で道路が尾根を越えるようになっている部分で、ちょっと高くなっているだけで被害を免れたところもかなりあります。これらは点々と存在していくのですが、確かに津波が及んでいないところでは建物被害がないので、支援は必要ないと思われがちですが、実際には生活が立ち行かないという方も少なくないと思われます。というのはこの被災地では高齢者も多く、その方々がたとえ自宅が被災していなくても、地域で生活していくためには自分の建物だけではなく、所属する地域そのものの都市機能が失われていれば、ものを買いに行くことも、病院に行くこともままならず、基本的な生活ができなくなってしまうからです。この点が例えば阪神淡路大震災とは大きく異なっているところです。
こう考えると、自宅の被災程度が必ずしもその人の生活被災程度にはなっていないことがわかります。このような「生活ができない」ことによって被災地を離れなければならなくなった人も少なくないでしょう。というわけで、この震災では例えば罹災証明のような「自宅建物が被災している人」だけに発行されるものは、被災程度をはかる尺度としては必ずしもベストではないと考えられます。いまの社会制度の中には、このような生活被災の罹災証明がないということに気づかざるを得ません。生活全損という尺度が欲しいところです。
今日は、震災から5か月にあたります。各地で慰霊のためのさまざまなイベントが行われますが、復興につながる想いが一つに結実することを期待したいものです。
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国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1