坪川です。東日本大震災はインターネット時代の災害である点で、明らかに阪神・淡路大震災とは異なっています。今回、実に大量の情報がネットにより配信され、日本だけでなく世界の隅々にまで届くようになりました。その大量の情報の中で象徴的な言葉がいくつか使われています。今日はその一つについて考えてみたいと思います。
最初は「協働」という言葉です。私たちが管理をしているALL311協働情報プラットフォームというサイトも、協働という言葉が使われていますが、多くの方々はこの取り組みを独立行政法人防災科学技術研究所の活動だとみなしていらっしゃると思います。しかしそれは事実と異なります。このサイトはトップページに書かれていますが、この震災に立ち向かうためのさまざまな主体が協働で活動するためのサイトで、主体とは研究所だけでなく、企業やNPO、自治体などだけではなく、個人の方々も含んだきわめて包括的な概念です。そこでは組織だから個人よりも上だとか、国が上で地方が下だとか、さらには金を出している人や組織が発言力があるなどということはありません。関わる全員が水平的につながっていて、上下関係や支配・被支配の関係がない状態を指しています。
震災をきっかけにして、さまざまな団体が「協働」をうたって活動をアピールしています。しかし本当に協働で運営されているところは非常に少ないのが現実です。目標を共有化し、その中でそれぞれができる範囲で力を合わせていく、言葉でいうと簡単ですが、実際にはなかなか容易ではありません。例えばボランティアセンターに行くと、必ず責任者は誰ですかという声を出す人がいます。実はボランティアこそが、代表的な協働の担い手であって、そこでは責任者が明確にされている企業組織などとは違う運営がまさに求められているのです。先にボランティアと組織性の問題について書きましたが、本質的な問題はこの協働の概念こそが、最も共有化されなければならないのに、現実にはそれがかなっていないところに問題があるのかもしれません。
さて、私たちは本当の意味での「協働」を作れるでしょうか。それとも私たちの社会ではそれは夢なのでしょうか。震災から2か月が経ち、一人一人が振り返ってこれまでの働きを見直す時期に来ている気がします。
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防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1