坪川です。震災依頼、被災地内外でさまざまな活動が行われ、それに関連してたくさんの出会いと関係性が生まれています。少しその点について考えてみましょう。
私たちは普段の生活で、多くの他者と関わりを持っています。中には他人との関係性を築くことを苦手とする人もいますが、やむを得ないというものも含めて、私たちは日々何らかの他者との関係を持たなければ社会とのかかわりが保てないのも事実です。私の手元にも震災以来被災地に入ったプロジェクトチームのメンバーから預かった名刺がありますが、すでに300名を超す関係者が我々の活動に関係して名刺交換をしています。この他にネットでALL311の活動を知って、ボランティアに申し込まれてきた方もたくさんいます。その方がたを含めると、すでに千人規模の市民の皆さんが、私たちの活動に何らかの関わりを持たれたということになります。
袖触れ合うも他生の縁と申しますが、僅かなご縁でもできた方々とは、よい関係でいたいと思うのが人情でしょう。ですが、実際には些末なことで擦れ違ったり、心が通わなくなることがあるのが現実です。先日東電の社長が避難所を訪問し、被災者の方々へ謝罪を続けていましたが、それとて諒解されるというレベルには達しているとは思えません。原発事故の問題では特に、意思の疎通や、被害意識の共有化にはまだまだ時間がかかりそうです。
すでに政府内には復興のための特別組織が立ち上がっています。早めの行動は悪いことではありませんが、まだ多くの被災者の方々は復興モードになっていない気がします。自分たちの知らないところで、有識者とされる人々によって、一方的にまちが変えられてゆく現実を被災者の方々はどう思われるでしょうか。性急な動きはかえって被災者の人間関係をぎくしゃくさせる原因にならないでしょうか。復興は確かに大事なことですが、いますこし、被災者に寄り添ってあげる時間があってもいいのではないかと思ってしまうのはわたしだけでしょうか。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1