坪川です。4月1日から3日まで、岩手県南部の被災地と宮城県北部の被災地を回りました。主に行政とボランティアへの情報支援としてeコミシステムの導入の可能性について確認し、調整をするためです。岩手県では遠野市、住田町、陸前高田市、大船渡市を、宮城県では気仙沼市、石巻市を尋ねました。
この災害の特徴として、被災地の範囲がきわめて広く、かつ被災程度が甚大であることがあげられます。16年前の阪神淡路大震災では被災地の復旧復興という視点がことさら重視され、そのことをテーマにした学会まで生まれましたが、今災害は被災地の復興だけではなく全く別のまちをつくる、いわゆる日本全体での被災者の受け入れと町の再生という大きな課題を抱えたことになり、それはとりもなおさず全国民レベルで災害を吸収しなければならないということを意味しています。仮にこの災害による損失が阪神淡路の10倍の100兆円規模だったすると、国民一人当たり100万円の損失になります。私たち一人一人が100万円の借金を背負ったようなものです。
生じてしまった被害をどのような制度や仕組みで吸収していくのかというのがこれからの課題だといえます。すでにボランティアで活動されている方々もたくさんいらっしゃいますが、この災害は阪神淡路よりもずっとずっと息の長い支援が必要になります。私たちが100万円の借金をどうやって薄めていくのか、負担を感じなくなるようにするにはどうすればいいのか、今こそ知恵を結集しなければなりません。
米国の南部ルイジアナ州を襲ったハリケーンカトリーナは、米国災害史上最悪の事態の一つを生じさせましたが、その際にも全米に分散した被災者の生活再建という大きな問題を抱えました。日本もこの災害時の対策を手本に、これから長い復活への途を探っていく必要があるでしょう。最優先すべきは被災地の衛生状態の改善です。これからどんどん暖かくなりますが、それに伴い防虫や防カビなどの対策が急がれます。助かった多くの命がまた損なわれることのないよう、早めの対策が求められています。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1