坪川です。今日は第1回地震ハザード・リスク情報に関する勉強会というのが東京国際フォーラムで行われ出席しました。今回は建設業界のハザード・リスク情報利用の現状と今後の見通しのようなテーマで、鹿島建設の宮村部長の講演がありました。
こういうテーマを議論すると必ず確率評価の問題が取り上げられますが、確率に基づいて私たちが意思決定をするような局面は、実はそれほど多くないにもかかわらず、私たちの日常にじわじわと確率の利用は増えています。例えばタバコには喫煙によって肺気腫になる可能性が何%高まるというような表記が定着しています。これを喫煙者はどう受け止めて(煙草を購入したり、喫煙を止めたりして)いるのでしょうか。
私たちが現場でリスクコミュニケーションをする場合、多くの市民の方々は決定論的な観点から始まるリスク対策を期待しています。例えば地震ですが、確率何%の地震対策というものを求めている人はほとんどいません。多くの場合自身の住む地域で起こりうる最大の地震動はどれくらいで、それに対して自分の家は耐えられるのかということから始まります。その意味では確率的に提示された情報でも、実際に使う際には決定的な情報に置き換えるという流れが生じていることがわかります。考えてみればこれはきわめて自然なことで、何らかの意思決定をする際には確率ではなく、確定的にならなければできないわけで、問題はその過程が健全であるかどうかだと思われます。つまり確率によって著しく不安になったり、逆に著しく楽観的になったりしないようにするにはどうすればよいかということが、実は結構大切だという気がするのです。
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国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1