2015年は介護保険制度が導入されてから16年目になります。これまでの15年間の経過を見てみると、介護福祉の面では日本社会はかつてないほどダイナミックな変容をしていることがわかります。日本の介護保険制度がスタートした2000年時点では、第1号被保険者(いわゆる65歳以上の人で基本的な介護保険給付の対象となる人)は2千百万人ほどでしたが、2013年4月時点では3千百万人を超え、現在はおそらく3千3百万人ほどになっていると思われます。およそ1.5倍の伸びです。介護認定を受けた(要介護+要支援)の認定者の伸びはさらに大きく、2000年時点では218万人だったものが2013年4月時点で564万人に達し、現在はおそらく600万人を超えているのではないかと思います。なんと3倍近い伸びです。ついでに介護サービスを実際に受けている人の伸びも見てみましょう。2000年当時の受給者総数は149万人でしたが、2013年4月時点では471万人に達しており、現在はおそらく500万人に迫っているのではないかと思います。こちらは3倍を超える伸びですね。この3つの数字を見ると、「制度の対象者となりうる母集団の伸び」<「制度の対象者の伸び」<「制度の実利用者の伸び」となっていて、なんとなく日本の介護福祉構造の一面の課題が見えてきそうな感じがします。
健康で安心した老後を送るために導入された介護保険制度は、ドイツなどの介護先進国にならってスタートしましたが、世界にも例のないほど急速に高齢化が進む日本社会にあっては「よく健闘している」制度の一つではないかと思います。しかし次々改善を進めてきた現行制度にも限界や課題がないわけではなく、特に問題なのが「施設不足」と「人手不足」です。要介護の認定を受けていても実際に介護サービスを受けていない(受けられない)人がこれだけいるという現実は、受け入れ施設の絶対的な不足が大きな要因となっています。特別養護老人ホーム(特養)の待機は全国どこでも当たり前になっています。さらにその背景には施設があっても人手がないという、介護職不足の社会構造が控えています。建物ができても職員が確保できなかったために、空きベッドが生じているという報道は、いまの介護の知られざる課題を如実に表しています。介護報酬の引き下げが議論され、施設を運営する側とそこで働く人との間で軋轢が生まれるなど、なかなかうまい解決方法が見えてきません。東日本大震災の時に東北のいくつもの介護福祉施設でスタッフが入居者とともに津波の犠牲となった事実を振り返ると、介護職の重要性とともに介護保険制度の在り方を社会として根本的に見直していく必要性を強く感じます。震災から間もなく4年が経ちますが、まさにここで社会構造を大胆に変えられるかどうか、私たちの本気度が試されているようにも感じます。
年 | 2000年 | 2013年 | 2015年(推定) |
第1号被保険者数(人) | 21,654,769 | 31,028,325 | 3300万? |
要支援+要介護 数(人) | 2,181,621 | 5,643,155 | 600万? |
介護サービス受給者数(人) | 1,489,688 | 4,714,363 | 500万? |
介護給付費(月・百万円) | 201,875 | 652,989 | 7000億円? |
平成26年版厚生労働白書による(元となる資料は厚生労働省老健局介護保険事業状況による)