これまでの防災はコミュニティ防災が中心で、阪神淡路大震災の後は特にその傾向が顕著です。それは震災の時に助けられた人たちの多くが近隣の住民による共助であったということを根拠に、しばしばご近所の底力こそが防災のカギだといわれることに表れています。しかし地縁関係が希薄な都市部や、平時に住民数が少ない郊外のベッドタウンではコミュニティだけでは支えきれない状況が次々と生まれてくるのではないかと懸念されます。現代人はかつてないほど流動性が高く、発達した交通手段によって非常に広範囲に相互拡散しています。それぞれがその場その場で災害に対応する能力を高めるためには、コミュニティ力に依存するだけの防災では心もとないものがあります。 そこでコミュニティとは別の人間集団であるアソシエーションが重要になってきます。
今回のつくば市民大学のような人と人のつながりは、その一つの例でもあります。市民大学講座では、いまこの瞬間に大地震が起きたらどうするかという設定で議論しましたが、本当はそういう限定的な状況だけでなく、普段それぞれが所属しているコミュニティにあって被災し、その後アソシエーションのつながりで相互支援できることは何かを議論することも大切なテーマと思われます。私たちのこれまでの研究でも災害直後の支援では近隣関係が重要であっても、時間がたつほどそれぞれの個人が所属しているさまざまな集団からの支援が欠かせないものになってきていることがわかります。
かつて人はそれぞれの地域社会の中だけに生活し、それ以外の社会に出かけることは特別なこととして一生に数えるほどしかないという人生を送ってきました。いまはそのような人を探すことはかえって難しく、より多くのつながりを求めてかなりの距離をもいとわず動くようになっています。つくば市民大学を縁とした関係者が、災害時に少し時間が経ってから集まったり連絡を取り合ったりして、その段階で支援が必要な仲間がいたら手助けができるような、そういう関係になっていくことを期待しています。