自然災害も、その種類により被害の出方には大きな違いがあります。近年最大の被害をもたらした2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)も、津波という罹災形態ゆえに、あの犠牲者数になったと言えるでしょう。あまり話題になりませんが、この地震では震度の大きかった(震度6以上)地域もかなりありますが、建物の揺れによる被害は決して多くなく、一部にもろくも崩れて犠牲者を出した首都圏の構造物もありましたが、全体的に見れば阪神淡路大震災時と比べて建物の耐震性はだいぶ向上している印象があります。
とはいえ、地震の被害は津波のようなものを除けば、強い揺れ→建物の被害→人の被害という流れになることが多いので、建物被害と人の被害は深い関係にあります。倒壊した建物で多数の死者を出した阪神淡路大震災では、6437名の死者・行方不明者に対して、全壊した住宅が約10万5千棟、半壊した住宅が約14万4千棟です。半壊した住宅2棟で全壊一棟に相当するとして、全壊換算した住宅数と人的被害との比率を見ると、約3.6%(全損換算建物数100棟に対して3.6人の死者が生じた)になります。同様にして東日本大震災についてもこの比率を求めると8.2%、2007年の新潟県中越沖地震でこれを求めると約0.4%になります。
一方、土砂災害ではどうでしょうか。記憶に新しい広島豪雨での死者は74人ですが、全壊家屋は133棟、半壊家屋は122棟で、前節の算式で建物被害数と人的被害との比率を求めると、38%という高率になります。つまり全壊換算した建物数の約4割近くの数の犠牲者が生じているということです。同様に、昨年の伊豆大島での台風による土砂災害による被害からこれを求めると、実に46%にも上ります。土砂災害がピンポイントで発生し、発生した場所では物的被害の割には犠牲者の数が多くなる、いわば「恐ろしい災害」であることがわかります。
ハザードマップでは土砂災害も、水害(洪水(外水氾濫)、内水氾濫など)も、地震などと同じように面的な広がりでハザードが描かれていますが、実は同じ警戒区域に指定されている中でも被災程度には相当な違いがあるわけで、そのあたりの情報が今のマップの表現では伝わりにくくなっている気がします。災害が単にどこまで及ぶ恐れがあるか(影響範囲)を示すだけではなく、その恐ろしさ、危険性が見る人に上手く伝わるような工夫が求められています。土砂災害は本当に「恐ろしい」災害なのです。

クルマだってこのありさま・・・
クルマだってこのありさま・・・