常総市立大生(おおの)小学校は、常総市のほぼ中央からやや東より、田園地帯に位置する児童総数126名の学校です。本年度、茨城県が推進する「学びを通じた被災地の地域コミュティ再生支援事業」の一環として、地域と学校とが連携して防災活動を推進するという取り組みのモデル校の一つになり、10月3日から4日かけて災害時の避難所体験訓練が行われました。私は仕事の関係で3日だけ参加させていただきましたので、その概要を紹介します。
まず、今回の訓練の流れは大まかにいうと、3つのカテゴリーに分けられています。一つ目は大規模な災害時に家にいられなくなった場合、避難所として指定されている小学校で宿泊するとどうなるかということを、身をもって体験するところです。参加したのは5年生と6年生、合計46名ですが、最初に体育館で寝泊まりするための準備として、防災倉庫から毛布や段ボールを運び入れ、一人一人(家族で体験する場合には保護者との合わせたスペース)を作って、寝場所を確保します。これは多くの避難所訓練で行なっているところだと思いますが、1枚がちょうど畳一畳分のサイズの段ボールを上手くつなぎ合わせて、囲いができるだけのスペースを作るのは一人ではできません。参加者同士で上手く協力し、工夫しないときちんとした形にならないのが、この作業の面白いところです。

段ボールの囲いができた後、サバ飯の炊き方を校長先生から指導
段ボールの囲いができた後、サバ飯の炊き方を校長先生から指導
次に夕食ですが、協力してくれた婦人防火クラブの方々や、看護学校の学生さんたちと一緒に、いわゆる「サバ飯」を作ります。防災科研の一般公開などでもよく行われるアルミ缶を使った簡易飯盒なんですが、これがなかなか難しい。面白かったのは着火のために用意したライターのレバーがなかなか固くて、子供の力では苦労するところでした。また「物を燃やす」ということを普段の生活ではあまり経験していない子供たちが多く、燃え草に用意した牛乳パックの割いた紙になかなか火をつけられないという点でした。炎が上方向に燃え上がるということや、酸素が十分に供給されないと燃焼が起きにくいことなど、燃えるという現象にはいろいろな要素が含まれていて、ファラデーのロウソクの科学ではありませんが、それ自体なかなか面白い現象なのですが、IH器具などの普及のせいか、裸火が日常から遠いものになりつつあるようにも思いました。
続いて第2のカテゴリーですが、こちらは過去の災害を学ぶということで、今回は昭和61年に発生した小貝川の大水害について、当時のビデオやテレビ番組を観て、さらに実際に災害対応にあたった地域の消防団や区長さんに来ていただき、体験談を伺うというものでした。映像の効果は抜群で、自分の生活圏の近くが画面に登場すると、歓声が上がったりしていました。身近なところで結構大きな災害があったのだ、という事実が、映像によって伝わるということはとても大事なことです。当時のNHKニュースなども紹介され、堤防決壊による水害のすごさがよくわかりました。続いて、当時の消防団の副分団長の方と、当時の区長さんとが水害前の見回りの話や、家にも帰れず徹夜で数日間巡回詩hていたときに、近隣の人たちや親せきが家財を2階に上げてくれたことなど、地域のきずなの強さを示すいろいろなエピソードを話してくれました。この学校は地域とのつながりが深く、子供たちを地域で育てるという意識が豊かな点は、今の時代貴重な地区かもしれません。

映像で見ると、地域の歴史を知ることができます。
映像で見ると、地域の歴史を知ることができます。
さて、第3のカテゴリーですが、こちらは救急救命を中心とした災害時の対応を学ぶというものです。応急処置や止血法など、看護学校生から学ぶというものがあります。残念ながら他地区の業務が入ってしまったので、2日目のこの学びには私は参加できませんでしたが、今回の一泊体験を通じて、参加された児童だけでなく、多くの関係者の皆さんそれぞれに、たくさんの得るものがあったのではないかと思っています。発電機がオイルがなくて当初動かなかったり、オイルを入れたら入れたで、今度は入れすぎで煙がもうもうとなったり、いろいろなトラブル(笑)はありましたが、「なにはともあれ、やってみる」という点で、今回の試みはいろいろな効果があったように思います。