現代は社会の多様性を容認して積極的に受け入れていかなければいけない時代です。かつての高度経済成長期には既成服を受け入れるように一定の枠に収まらざるを得なかった私たちの「満足感」は、いままさに枠からはみ出さなければ満足しないレベル、オーダーメイドの服でないと満足しないレベルにまで達しています。見方を変えればそれが可能なほどあらゆる技術が成熟したともいえるのかもしれません。防災についても社会を構成する個々人の多様なライフスタイルに合わせたものを作っていかなければなりません。
国や自治体もそれぞれのサイトで沢山の防災教材を公開しています。それはどれも大変よくできてはいますが、ちょっと網羅的過ぎて、ややもすると読み手に共感を生み出しにくい感じがします。「親を介護している人のための防災」や「障害のある家族を抱えた家庭での防災」など、個別の事情を反映した防災技術をもっと充実させることも必要ですし、何よりその人たちに現実的な支えが生まれるような、周りからの働きかけができる仕組みが必要です。
人は何もない時(何の変哲もない日常がおくれているとき)には災害や疾病や事故など、不幸な現実にはなかなか向き合わないし、対策をとることもしないものです。何かが変わるきっかけとなるような出来事、たとえば「家を建てる」、「就職(転職)をする」、「結婚をする」など、人生のターニングポイントになるようなイベントに合わせて、防災についても考えてみる、その仕組みが大切なのだと思います。教材は進歩したけれど、なかなか使われないということにならないよう、きっかけを発掘することも忘れないで取り組みを進めていきたいと思います。
ママだけではなく、パパにも読んで(書き込んで)もらいたい本です。