認知症の高齢者が日本全体で300万人という現実を前にして、我々は何をすべきでしょうか。まずは介護の現実を国民一人一人がきちんと把握し、理解しておくことが大事ではないかと思います。最近刊行された藤原るかさんの「介護ヘルパーは見た(幻冬舎新書)」は、タイトルは何やらどこかの人気テレビ番組のような感じですが、中身は至ってまじめで、介護の現場でヘルパーが日常目にする様々な事例が紹介されており、実際に介護に直面していない人でも一読すべき内容になっています。平時でもこの状態なのですから、災害時の苦労は推して知るべしというところです。介護が必要な高齢者を抱えているご家族は、耐震性の低い家に暮らしている人たち以上に、災害に対して不安を抱えているに違いありません。家の耐震改修制度はあっても、人の耐震改修制度はないのですから。
私自身も3年間、独りで親の介護をした経験がありますが、いま思えばもっとこうしておけばよかったと思うことが沢山あります。それでも介護は殆どの人が一度は直面する課題です。いま国政で頑張っている高齢者の議員の方もいますが、彼ら自身も間もなく自分がその当事者になるのだという気構えがあれば、福祉政策についてもっと熱を入れなければならないのではないかと思ったりもします。世界にも希な超々高齢社会の日本だけに、制度も技術も、そして運用も、世界に誇れる先例になるようにしたいものです。福祉は21世紀の世界で間違いなく最重要な課題になると思うからです。