もともとアーカイブスの目的は映像資料やデータを集めることではありません。それを活かしていくことをあらゆる知恵を絞って考え出すことが大事です。とかく津波のビデオのような映像データにばかりが注目されがちですが、結局は映像だけでは災害の実態はわかりません。被災地はどんどん変化しており、その記録は復興とともに失われていく運命にあります。これは止めようがないことですが、記憶もそれとともに失われてしまうのは避けられないことでしょうか。
人間はいつまでも同じことを覚えていくことはできません。ましてや数百年単位で起きる自然災害について、世代を超えて伝えていくのはかなり難しいでしょう。となれば我々は記憶が継続しなくても防災力が維持されるような仕組みを作る以外にはないのです。ここより先に人は住まないこと、ここより先で活動する場合には、地震が起きたらすぐに避難できるようにすること、これらを、制度的な枠組みの中で守っていくほかないのかもしれません。社会はどんどん変化します。今から100年後、200年後にはおそらく私たちの日常は今では想像もできないようなものに変わっていると思いますが、その時でもこの災害がある種の指標となって、社会が適切に守られていることを期待したいものです。
遠野市の秋(10月8日午前撮影)