実はNZにも日本や米国と同様に地震保険があります。EQCという政府が運営する地震保険の専門組織があり、住宅を対象とした地震保険の販売管理を行っています。NZの地震保険が日本や米国と基本的に異なるのは政府が直接契約を引き受ける保険であることもありますが、保険料率が全国一律でしかも相当低廉に設定されていることです。その意味では保険というよりも共済の思想に一致するものかもしれません。
以前にカリフォルニアの地震保険制度を調査した際にLAでお世話になったコンサルティングアクチュアリーのR.Roth氏が、NZの地震保険のリスク対応型保険料の評価を手伝っているという話を聞きました。もう10年も前のことですが、現在でもまだNZの保険料率は一律です。
危険に応じた保険料にならない理由はいろいろあると思いますし、それは科学的な理由よりも社会制度的な評価のほうが優先することもあるでしょう。実際、日本の地震保険でも創設(1966年)当時の保険審議会答申にすでに地震リスクについては、地域、物件によって相当程度の差があるが、保険の性格上それを極端に反映するのは望ましくないと書かれています。差をつけないということはリスクに対する説明責任を回避することになりますが、一方でリスクそのものの認識を低下させることにつながる可能性があります。つまり建物があぶないところにあろうが、壊れやすい建物であろうが、保険料が同じであれば積極的に防災対策を取らず、被害を受けたら補償してもらおうと安易に考えてしまうかもしれません。これはそれだけでなかなか難しい問題ですので、きちんとした調査や分析が必要なテーマなのです。
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